残業の事実を示す証拠

実際に残業した長さを示すものであり、タイムカードや業務日報、パソコンのログイン・ログアウトデータなどがこれにあたります。上述したようなものがない場合は、業務メールの送信履歴、会社で撮影した時刻がわかる画像、終電を逃した際のタクシーの領収書などでも構いません。

また、客観的かつ詳細な記録であれば、勤怠に関する日記やメモ、家族への私的なメールやLINEなども証拠として採用される可能性があります。

残業の内容を示す証拠

実際に行った業務の内容に加えて、残業が上司の指示・承認によるものだったことを示すもので、業務に関わる資料やメール、残業指示書などがこれにあたります。残業指示書がなければ、上司が残業を指示、あるいは承認したとわかるメールやメモ、その他の書面でも構いません。

残業に対する支給額を示す証拠

実際に未払いになっている残業代を明らかにするものであり、給料明細書や源泉徴収票などがこれにあたります。給料明細書は毎月の給料日までに、源泉徴収票は毎年12月末ごろに交付されるのが一般的です。

なお、未払い分を計算する際には就業規則が役立つので、これもあわせてコピーを準備しておきましょう。

労働契約の内容を示す証拠

基本給と残業代、就業時間などの取り決めを示すものであり、雇用条件通知書や雇用契約書などがこれにあたります。雇用条件通知書は会社が一方的に通知するもの、雇用契約書は双方の合意を証明するものであり、どちらも入社時に交付されるのが一般的です。

一部期間の証拠を利用する

一部期間のみでも残業代未払いの証拠があれば、それを拡大して計算・請求できる可能性があります。例えば、過去2年分の残業代未払いに対して直近1年分の証拠がある場合、2倍すればだいたいの請求金額が求められます。

ただし、これはどのような場合でも認められるものではありません。証拠が少ないほど不利なことは間違いないので、できるだけ多くの資料を収集しておくことをおすすめします。

退職後に証拠を集める

たとえ退職したあとであっても、残業代未払いの証拠は集められます。例えば、公共交通機関に交通系ICカードの履歴を請求すれば、それは通勤の証拠として利用できるでしょう。

その他、会社のアカウントから私用のパソコン・携帯宛に送信したメールなども証拠となる可能性があります。

弁護士に相談する

そもそも会社側には、勤務記録などを保存しておく義務があり、これは「開示請求」を行うことで入手できます。開示請求とは、関連書類の開示を求める手続きのことです。自ら行うこともできますが、専門的な手続きを正確にやり遂げるのは、簡単なことではありません。証拠が改ざん・破棄されるリスクを考えても、やはり弁護士に相談するのがおすすめです。

あらかじめ弁護士に相談しておけば、たとえ開示請求を拒まれても、すぐに「証拠保全命令の申し立て」に移ることができます。証拠保全命令の申し立ては訴訟のための証拠保全手続きであり、基本的に拒まれることがありません。弁護士への相談は、証拠のない残業代未払いにおいて、最も効率的な手段といえます。