残業代を請求する場合の流れ

1 まずは任意交渉から
残業代の請求というと、いきなり裁判を起こすものと考える方も多いかもしれません。しかし、残業代の請求において裁判を起こすのは最後の手段であり、できるだけ双方で話し合って解決することが大切です。

未払いの残業代の支払いを会社に求める場合も同様で、まずは任意交渉からはじめることとなります。任意交渉では内容証明郵便を会社へ送付し、話し合いで双方が納得できれば問題解決となります。

2 折り合いがつかない場合は労働審判
示談交渉で金額などに双方が納得しない場合は示談交渉の決裂となり、労働審判で解決を図ることとなります。

労働審判では、労働者と会社とのあいだで発生した問題を労働審判官と労働審判員が仲裁し、解決を図ります。労働審判は訴訟と比較すると審理期間が短いことから、問題を迅速に解決したいという場合にとられることの多い手段となっています。

3 それでも折り合いがつかなければ訴訟
労働審判を経て出された結論には、異議をとなえることができます。労働者と会社のどちらかが異議をとなえた場合、訴訟で決着を図ることとなります。

訴訟では労働審判とは異なり、十分な時間をかけて審理が進められるため、時間をかけてでも双方が納得できる結論を出したいという場合に実施されます。

任意交渉を行うまでの流れ

1 証拠集め
残業代を請求するためには未払いの残業代があることを証明するための資料（証拠）を集める必要があります。

資料の一例としてはタイムカードのコピーや労働時間管理システムのデータ、労働時間が記載された日報、残業時間中に送信したメールなどが挙げられます。

2 内容証明郵便の送付
資料が集まったら会社へ内容証明郵便を送付します。内容証明郵便の送付には会社側へ未払い残業代の支払いを請求する意思を伝えるという目的だけでなく、残業代請求の時効の完成を猶予するという効果（法律上、「催告」と呼ばれています。ただし、催告した場合でも催告から6ヶ月以内に審判や訴訟といった手続きをとらないと時効期間が再開してしまいます）もあります。

また、ここではタイムカードなどの会社側が保有する資料の開示を請求することも重要なポイントです。

3 未払い残業代の計算
自身で集めた資料と会社側が開示した資料をもとに、未払い残業代の計算を行います。深夜や休日の勤務や、法定労働時間を超えた分については割り増しされる点に注意が必要です。

4 任意交渉の実施
未払い残業代の計算が完了したら、会社との任意交渉を行います。任意交渉では請求金額を伝えることだけでなく、その根拠となる資料を提示し、相手に納得してもらうことが重要です。

任意交渉の相談は弁護士へ

任意交渉は労働者と会社の間で行われますが、個人が会社を相手にして交渉に臨むことに抵抗を感じるという方も多いことと思われます。したがって、任意交渉に臨む際には、「味方」を作っておくと安心です。

残業代請求においては任意交渉であっても訴訟と同じように弁護士へ相談いただくのが有効です。労働問題の解決においては労働基準監督署が味方となってくれるケースもあります。しかし、労働基準監督署をはじめとした国の機関は民事不介入の原則を守らなければならず、残業代請求の代行まで行ってもらうことはできません。